「ワインの神話」シャトー・ペトリュス。世界的批評家を唸らせる味と品質の秘密

「ペトリュスワインはどうして高額なものが多いの?」
「ペトリュスってどれくらいの値段なの?本当に美味しい?」


世界的に有名な高級ワイン、シャトーペトリュス。ステイタスシンボルとして憧れる人も多いですよね。


ペトリュスが他のワインよりもなぜ高額になるのか、作り方のこだわりなどを通して解説していきます。
ペトリュスのワインの知識を深めることができれば、ワンランク上のワイン通になれるでしょう。
品評家の間で芸術品とも称される完璧なワイン、本物の味を体験してみませんか。

「シャトー・ペトリュス」は超高級ワイン!


「シャトー・ペトリュス」はフランス・ボルドー地方のワイン生産者(シャトー)の中でも最も高額なワイン生産者 のひとつです。
高額なワインというと、フランス・ブルゴーニュ地方の「ロマネ・コンティ」が有名ですよね。ワインに詳しくない人でも「ロマネ・コンティ」は名前を聞いたことがあるはず。
「シャトー・ペトリュス」の品質や評価はロマネ・コンティに勝るとも劣りません。


「シャトー・ペトリュス」のワインは小売値だと1本数十万円以上するのも当たり前 です。天候に恵まれ、品質が良い年のものは更に高額で取引されます。わずかですが小売店にも出回っているので、見つけたら逃さず試してみたいもの。


長期間熟成することを前提に醸造されているため、通常のメルローよりタンニンが濃く渋みが強いのが特徴です。コクがありまろやかな味わいが特徴で、10~20年熟成することでさらに深みのある味を感じることができます。

どうして高級なの?ペトリュスの3つの特徴


ペトリュスが高額になるのには3つの理由があります。

  • 生産数が少ない
  • 他の有名シャトーをしのぐ魅力
  • 長期間の熟成が必要

詳しく説明していきましょう。

特徴1.生産本数がとにかく少ない


高値で取引される理由は、まず生産本数がとても少ないことがあげられます。年間わずか30000本。そのため、多くは著名なセラーやコレクターに買い取られてしまって、一般には出回らないこともめずらしくないのです。


理由として、ペトリュスで使用するブドウ畑は11.4ha(東京ドーム約3個分) しかなく、生産環境が限られていることが第一にあげられます。さらに、品質のいいぶどうのみを選別していくため、ごく限られた量しか生産することが出来ないのです。


また、他のシャトーでは、品質がやや劣るものに「セカンドラベル」というクラスを付けて格安で販売していますが、ペトリュスにセカンドラベルはありません。
そのことも、ペトリュスの希少性を高める理由になっています。

特徴2.ボルドーの有名格付け【5大シャトー】をしのぐ魅力


ボルドー地方で生産されるワインは、1855年のパリ万国博覧会の時から、「メドック格付け」によって品質を1~5級に評価されています。


ですが、ペトリュスはメドック格付けには入っていないにも関わらず高値で取引されているのです。
ペトリュスが最初に注目されたのは、1889年のパリ博覧会において。「マルゴー」「ラ・トゥール」「オー・ブリオン」「ムートン・ロートシルト」「ラフィット・ロスシルド」の5大シャトーをはじめとする数々の有名シャトーを抑えて、金賞に輝いたことでした。
やがて1945年にオーナーになったマダム・ルバの尽力によってに名前は世界に広がり、アメリカのケネディなど名門ファミリーからも愛される上流社会のステータスシンボルとなっていきました。


5大シャトーのワインはばらつきもありますが大体100,000円から販売されます。一方ペトリュスは取引価格は30~40万以上!
高額で取引される理由はやはり生産量。5大シャトーで最も生産量が少ないシャトー・オー・ブリオンでも年間生産量が130,000本なのに対し、ペトリュスは30,000本しか生産されません。いかに入手困難かが分かりますね。

特徴3.熟成することが前提。こだわりの詰まった「メルロー」


ペトリュスの畑があるポムロール地区では、メルローというぶどうを多く栽培しています。
ペトリュスのメルロー栽培はとにかくこだわりが多いことで有名です。


例えば、古樹から採れるぶどうにこだわり、樹齢70年になるまでぶどうの樹を一切植え替えをしません。樹齢が長くなると、土壌深くまでしっかりと根付き、地表深いところから養分を吸収することができ、品質のいいブドウを実らせるのです。


畑の土壌もペトリュスの個性を引き立てるのに役立っています。「黒粘土」という特殊な粘土質は乾燥しにくい性質を持っており、黒粘土は同じ地区でもペトリュスの持つ畑のみが持つ特有の土壌。メルローは乾燥に弱いことでも知られるので、粘土質の土壌はメルローの栽培に最適で香りの強い濃縮感のある実を実らせます。


さらに、色が変わる前に間引きを行い味わいを凝縮させる手法をボルドーで初めて取り入れ、旨味や渋味の詰まったブドウを収穫できるようになりました。
収穫も午前中はぶどうに水滴がついているからと午後からのみ行うなど、1つ1つの工程にこだわりがつまっています。


結果、ペトリュスのメルローは味にコクがあり、まろやかに育ちます。
一般的なメルローは、渋みが穏やかなので熟成しなくても美味しいと言われていますが、ペトリュスは渋みの元であるタンニンが多く、長期間熟成させることでより魅力を感じられる味わいになっています。
寝かせれば寝かせるほど味に深みが出て、ほかのメルローワインとは一線を画したワインになるのです。

シャトー・ペトリュスとロマネ・コンティの違い

高級ワインといえば最初に挙げた「ロマネ・コンティ」が超有名ですね。
ペトリュスとロマネ・コンティは、同じフランス産赤ワインということもあり、比べられることも多いワインです。二つの違いを見ていきましょう。

ぶどうの品種と味わいの違い


2つのワインは、まず使用されるブドウの品種が違います。
ロマネコンティはピノ・ノワールのみ。ペトリュスはメルローと、メルローの他に、カベルネ・フランという品種も少しブレンドしています。


次に醸造の方法も違います。それぞれのブドウの良さを引き出す方法が採用されているのです。
ロマネ・コンティはブルゴーニュの伝統的な醸造スタイルに従い専用の木桶を使い、危険を犯しても人力での櫂入れ作業で熟成させる方法を貫いています。


ペトリュスはセメントタンクの中で発酵させたあと樽に移して熟成し、ろ過をする変わりに3ヶ月に一度「澱引き」という作業を行います。
より新しい技術を取り入れることで、ペトリュスはメルローの味を最大限に引き出しているのです。


ぶどうや製法の違いにより同じ赤ワインでもロマネ・コンティは軽やかな口当たりが魅力であり、ペトリュスは濃厚さや余韻が長い味わいという違いを生んでいます。

価格の違い


どちらも高級ワインには違いありませんが、ペトリュスの取引価格は30~40万円、ロマネ・コンティは100万以上と、実はロマネ・コンティのほうが高額な傾向にあります。


理由はロマネ・コンティの方がペトリュスに比べて更に生産数が圧倒的に少ないからです。ぶどうを栽培する畑の大きさはたったの1.81ha(東京ドーム約0.4個分)。狭いといわれているペトリュスの畑でも11.4ha(東京ドーム約3個分)と考えるといかに畑が狭いかが分かります。


ワインの生産量も年間30000万本のペトリュスに対し、ロマネ・コンティはわずか6000本しかありません。超高額になるのも仕方ないと言えますね。

ペトリュスのワイン飲み頃は最低でも10年以上経ってから


ペトリュスには最低でも10年、平均して15年の熟成期間が必要です。
保管するときは13~15℃の低温保存すること、振動が加わると味が変わってしまうので、セラーなどで静かに保存することなど、丁寧な管理が求められます。ワインセラーは1万円程度で購入できるので、ペトリュスのためなら是非設置すべきですね。


飲む際は冬なら室温、夏なら冷蔵庫で20分程冷やし18~20℃で飲みましょう。香りが広がり深い味わいが楽しめます。

シャトー・ペトリュスのヴィンテージワイン5選

シャトーペトリュスの中でも、特徴のあるヴィンテージを5本紹介します。

世界的ワイン評論家に絶賛された名品【シャトー・ペトリュス2005年】


 世界でも最も有名なワイン評論家とされるロバート・パーカー氏の評価、「パーカーポイント」(PP)で高得点を獲得した年のペトリュスです。飲みごろは2015年~2025年。
 パーカー氏は2005年製に対して、「過去の28年間で試飲したものと全く異なっている」と驚きの声を挙げています。


2005年のメルローは、タンニンの濃度が濃いため長期間寝かせるほど美味しくなります。
まさにヴィンテージの王様と言える一本。一生に一度は味わいたい傑作です。

価格 605,000円
品種 メルロー
味わい 辛口
生産年 2005年

あのペトリュスに手が届く!低価格が魅力【シャトー・ペトリュス1983年】


ほかの年に作られたペトリュスに比べてやや低価格で販売されており、手が届きやすいのが魅力です。価格が低くなっているのは、パーカーポイントが86とやや低評価ことにもよります。評価の理由は、味の濃さや香りの強さに欠けるというものでした。


ですが、飲み頃を迎え、ペトリュスらしいコクのある味わいが評価され、価格は徐々に上がりつつあります。ペトリュスの底力が分かる一品です。

価格 344,260円
品種 メルロー
味わい 辛口
生産年 1983年

パーカーポイント92の優良年【シャトーペトリュス1986年】


優良年製のペトリュスなのですが、1986年も他のヴィンテージより少しポイントが低いため、価格が低くなっています。
1986年は気候もよく、間違いないヴィンテージ。しかし、タンニンの濃度はしっかりあるのですが、香りがやや弱いと評価されました。


とはいえ、厳しい製法を守って作られていることに変わりはありません。「この香りでもポイントが低いのか!」と逆にびっくりしてしまうはず。
ペトリュスの飲みごろは15~30年経ったものといわれているので、まさに今が飲み頃です。出来映えの割に低価格という、ペトリュスの中でもお得な1本です。

価格 344,260円
品種 メルロー
味わい 辛口
生産年 1983年

悪天候のため、より基準が厳しくなった厳選品 【シャトー・ペトリュス2011年】


2011年は、ボルドー地方が気候に恵まれず多くの農家で品質の良いブドウがとれませんでした。そのため出荷数が少なくなり、プレミアがついています。
とれたブドウは少なくても、品質を守るために選考基準が非常に厳しくなりました。だからこそ味も品質も確か。飲みごろは2021年からとされています。


生産量が例年よりさらに少ないため、プレミア中のプレミアムワイン。もし出会えたら逃す手はありません!悪天候の中でも厳格に守られた奇跡一本なのです。

価格 470,800円
品種 メルロー
味わい 辛口
生産年 2011年

パーカーポイント100点満点!【シャトー・ペトリュス2000年】


パーカーポイント100、フランスを代表するワイン専門誌「ル・クラスマン」三ツ星(19.5点)という最高の評価を獲得した年のペトリュスです。


ブドウの味と甘みが凝縮された完成度で、メルローワインの中では右に出るものがない傑作と言われています。2015年以降が飲み頃とされているのでまさに今が飲み頃です。
50年の熟成に耐えるタンニンの濃度を持っているので、個人のし好品だけでなく、財産として受け継ぐ価値があります。
ペトリュスに限らず、1本のワインが著名な評論家による満点評価を受けることはめったにありません。ペトリュスの中のペトリュスといえる逸品です。

価格 1,062,000円
品種 メルロー
味わい 辛口
生産年 2000年

ペトリュスのワインに出会えたら超ラッキー!


生産地、生産方法、生産量のどれもが品質を保つのに欠かせないポイントとなり、世界最高級と言われるペトリュスワイン。
何といっても流通する量が各段に少ないので、めったなことでは出会えないのがワインファンの心を捉えて離しません。
今回紹介したヴィンテージは、それぞれ高評価でありながらリーズナブルだったり、間違いない至高の一本だったりするものたちです。
いつかくる大切な記念日や家族の1生に1度のお祝いなどに合わせて選ぶ参考にしてください。